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ゴールデン街の灯、おうちに届け　新宿・休業中のバー、ネット中継で交流続ける

国内有数の繁華街、東京・新宿。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請により、大半の店舗がシャッターを下ろしたままだ。街の灯を消すまいと、オンラインで接客をつづける店主たちがいる。

　今月中旬の夜、約３００軒のバーやスナックが並ぶ新宿ゴールデン街。普段なら昼のように明るい通りは暗く、ひっそりしていた。そんな中、１軒の店に薄明かりがついていた。

　「Ｂａｒダーリン」。扉には「ライブ配信中」の貼り紙がある。無人のカウンター席の中に店主の石川雄也さん（４６）が立つ。「あ、イシイちゃん、こんばんは」「おー、ドラゴン。大阪からありがとう」。手にしたスマホの画面に書き込まれるコメントで誰が配信を見ているかわかる。

　タブレット端末で店内を撮影し、ネットのライブ配信機能で中継する。自分でビールを注いで乾杯。ラジオＤＪのように問わず語りを続けたかと思えば、「お店にいる気分」といった客のコメントには素早く反応。画面越しに声をかける。ある常連客が「マスクを作ったんで送ります」と書いた時は胸が熱くなった。

　休業を始めた１日以降、ほぼ毎日配信する。途中からネット決済のＩＤを画面に表示すると、思い思いの金額を入れてくれる客も現れた。中学の同級生やかつて来店した海外の観光客とまで「再会」できた。「つながる、ということがうれしい。雰囲気と人の関係性で成り立ってる店だから」

　ピンチを乗り切ろうと、手を携える動きもある。

　店の様子を無料で配信している「ｂａｒ　申（サル）」店主の武石洋佑さん（３９）は２０日、テレビ会議システム「Ｚｏｏｍ（ズーム）」を使い、他店の従業員らと一緒に画面に登場。漫才のようなトークで客を楽しませた。

　この街で働いて十数年。２０１１年の東日本大震災も、１６年にあった街の火災も、他の店主らと協力して乗り越えてきた。

　各店舗で作る組合は、都の休業協力金の申請が始まる１週間前から、手続きを各店主らに丁寧に伝えた。ネットに親しみのない年配の経営者もいるためだ。

　「今回は大半が休業で、『がんばろう』というスクラムすら組みづらい」と武石さん。それでも、あきらめない。「ゴールデン街の灯を消したくないんです」（宮崎亮）

　■２丁目の店もオンラインで営業

　新宿２丁目の店も、オンラインで営業をつづける。

　女装サロンバー「女の子クラブ　新宿本店」。今月中旬、４０席ある店内で店長のくりこさんが一人、パソコン越しに客と談笑していた。Ｚｏｏｍを利用したオンライン営業で、この日は午後７時～午前０時。２時間制で２千円だ。街からほぼ人が消えた３月３１日に始めた。「今の新宿２丁目はゴーストタウン。店を潰さないための苦肉の策です」

　この日の客は１０人ほど。都からの休業協力金を申請予定だが、「普段の売り上げを考えると、その場しのぎにしかならない」。店の家賃や従業員１８人の給料が重くのしかかる。

　「またお店で飲みたい」「オンラインでつなげてくれてありがとう」。そんなお客の声を励みに前を向く。