上智大学のイメージ🏫

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半導体やコスメの学部､最古の医学部も　九州の大学多彩

九州・沖縄には約80校の4年制大学が集まる。農業・畜産や医学など地域の特性や歴史に根ざした分野に強みを持つ大学が目立つ一方、近年は半導体やスタートアップ、国際人材育成でも存在感を高めてきた。台湾積体電路製造（TSMC）の熊本進出も刺激となり、多彩な研究に取り組んでいる。
福岡市中心部から電車とバスで西へ40分ほど。小高い山林地帯を切り開いた約270ヘクタール（東京ドーム60個分）の敷地に九州大学の伊都キャンパス（西区）が広がる。海や山など豊かな自然に囲まれた環境で学生が学ぶ。
点在していたキャンパスを統合するため2005年に移転が始まり、旧箱崎キャンパス（東区）などから多くの学部などが移って18年に完成した。旧箱崎キャンパス跡地では国内最大規模の再開発が予定され、注目を集めている。
九大の創立は1911年。東京、京都、東北に続く4番目の帝国大として発足した。当時は工科大と医科大で構成され、今では12学部を抱え学生約1万9000人が在籍する。これまで多くの研究者や政治家のほか、地元を代表する企業群「七社会」などのトップを輩出してきた。
近年はスタートアップ育成でも注目される。福岡市が2012年に「スタートアップ都市宣言」を打ち出して幅広い起業支援が進み、人工衛星を手掛けるQPS研究所など同大発の上場企業も育った。九大は24年4月に産学連携を担う子会社も設立、研究成果を社会実装につなげる動きを加速している。
文部科学省の「学校基本調査」によると、九州・沖縄に本部を置く4年制大学と大学院大学（速報値、大学院含む）は5月時点で79校だった。全国にある大学813校の1割近くに相当する。学生数（大学院含む）は24万1000人で、20年前からほぼ横ばいで推移している。
大学数、学生数ともに福岡県が最も多い。公立では北九州市立大、私立では福岡大や西南学院大などがあり、卒業生が有力企業などで活躍している。
次に多いのが熊本県。教員養成などで評価を得ている熊本大（熊本市）は1949年に県内の官立教育機関を統合して発足した。TSMCの県内進出を受け、最近は半導体教育にも力を入れている。
4月には学部相当の「情報融合学環」をつくり、半導体の製造工程に携わる技術者育成に乗り出した。熊大の学部新設は75年ぶりだ。2025年春には大学院「自然科学教育部　半導体・情報数理専攻」を立ち上げ、半導体の高度人材を育てる環境も整える。
国際色豊かなのは12年開学の沖縄科学技術大学院大（OIST）。英語が公用語で学生の国籍は54カ国・地域にのぼる。25年度には同大発スタートアップなどが入居する研究拠点を拡充するなど、起業支援に積極的だ。
大分県にある立命館アジア太平洋大学（APU）も学生6280人のうち49%を約110の国・地域の留学生が占める。23年には「サステナビリティ観光学部」を新設し、沖縄県北部で25年開業予定の大型テーマパーク「JUNGLIA（ジャングリア）」を計画する企業と産学連携協定を結んだ。
地域の歴史や産業と密接な研究も盛んだ。長崎大医学部は1857年にオランダ軍医のポンペ・ファン・メールデルフォールトが医学講義をしたのが始まり。「日本最古の医学部」として知られ、感染症の研究などに強みを持つ。
豊かな自然のもと、農水産物研究や獣医学などが充実した大学もある。鹿児島大は2024年に共同獣医学部に「畜産学科」を新設し、農学と獣医学の素養を併せ持つ畜産技術者を育てようとしている。
佐賀大学のコスメティックサイエンス学環の説明会には多くの女子高生が集まっ
佐賀大では化粧品について学ぶ学部相当の「コスメティックサイエンス学環」を26年に設置する構想がある。国公立大では初の試みだ。佐賀県が化粧品関連の自然由来原料の供給地として産業振興を図るなか、人材育成に力を入れる。県は初の公立大、佐賀県立大の29年設立も目指している。
九州・沖縄も少子化に悩まされている。大学進学率は高まったものの、学生の奪い合いはますます激しくなる。その中で「選ばれる大学」であり続けるには、特色に磨きをかける必要がありそうだ。