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就職めざし資格取得に熱　人気高まるIT・金融系
採用企業、実務能力も重視

大学生の間で就職活動や就職後に役立つ各種の資格を取得する動きが広がっている。新型コロナウイルス下で学内外での活動が制限されてきたうえ、将来の人生設計への不安が高まっているためだ。企業側は資格取得に理解を示す一方、資格だけでは測れない実務能力も重視している。

近畿大学キャリアセンターが提供する資格講座の2020年度の申込件数は、前年度に比べ約1割増えた。公務員講座など資格取得が難しい分野の人気は根強いが、英語能力テストなど受講が手軽で、汎用性が高い講座へのニーズが高まっているという。

通信教育を手掛けるユーキャン（東京・新宿）ではファイナンシャル・プランナー（FP）や宅地建物取引士（宅建）の各講座について、大学生の年齢層での21年1～9月の受講者数が17年の同期に比べ約1.8倍に拡大した。

情報系の資格も注目を集める。国内でMOS（マイクロソフトオフィススペシャリスト）の試験を運営するオデッセイコミュニケーションズ（東京・千代田）によると、10年前は社会人の受験者が多かったが、現在は大学生の年齢層による受験者が全体の半数近くに上るという。名古屋学院大学は21年度からMOSの試験対策講座を開始。定員を上回る申し込みがあった。

IT（情報技術）の基礎知識を問う「ITパスポート」でも、20年度の大学生の申込者数は約2.6万人と、5年前の約2倍になった。立命館大学ではITパスポートの取得に向けた受講者がここ3年間で毎年1.5倍ずつ増えている。

企業の採用担当者は熱を帯びる大学生の資格取得の動きをどうみているか。就職後、社内外で進路を切り開くのに役立てたり、業務上必要になる場面があったりするが、資格の有無を頼りに採用の可否を判断することはないようだ。

就職人気ランキングで上位に名を連ねる損害保険ジャパン人事部人材開発グループ課長代理の野中美菜氏は「資格を保持していることで選考に有利に働くことはないが、受験者がどの分野に力を入れてきたかを見る一助にはなる」と話す。

同社は内定後にFP3級と損保一般試験の資格取得を推奨する。営業では包括的な金融知識を持ちながら顧客の相談に乗ることで信頼を勝ち得たり、商品の企画に役立てたりするためだ。海外勤務を希望し、定期的に英語能力テストを受け続ける社員も多い。

エンジニア採用では資格より、本人の実践能力がものをいう傾向が強いようだ。プログラミング関連の資格は多岐にわたり、資格の有無だけでは実力が見えにくい。ZOZOのエンジニア採用担当は「実際の開発経験を重視する」と話す。

メルカリの採用マネージャーである久保木誉延氏は「資格取得のためのインプットは重要だが、その知識をアウトプットにつなげているかを評価する」と語る。選考では個人のブログやソースコード共有サイトの「ギットハブ」作成のほか、インターンシップ（就業体験）などを通じてどれほど最新の技術や情報に接しているかに重きを置く。

こうした企業の採用ニーズをくみ取る学生もいる。キラメックス（東京・渋谷）が提供するオンラインのプログラミング教室「テックアカデミー」では20年度の大学生の申込者数が前年度の約1.8倍に増えた。経済学部や法学部などの文系学生も少なくない。

19年度にプログラミング言語「Java」などを2カ月半学んだ東海大学の元学生（22）は、システムエンジニア（SE）をめざし受講した。受講後も独自にゲーム開発を続け、今春にはSEとしてIT業界に就職した。現在は別の言語を使っているが、1つの言語を習得したため応用がきくという。

自己の適性把握　無料講座活用も
大学のキャリアセンターでは1、2年生の時点から、就活の準備として資格だけでなく、インターンシップに関する相談も増えている。明治大学就職キャリア支援事務室の倉吉俊一郎氏は「学生個人の特性に加え、興味や関心に合ったものを案内している」という。
就きたい職業によって資格やインターンシップの種類は異なる。まずは自身の適性を把握したうえで、経験者の声を聞いたり、下調べをしたりして、職業希望に沿った準備を進める必要がありそうだ。
試して合わないときは見切りをつけるのも手だ。IT業界に就職した東海大の学生は当初、医薬情報担当者（MR）をめざしてインターンシップに参加したが「肌に合わない」と感じ、希望職種を切り替えた。
学びや経験のための金銭負担が重い場合は、オンラインで無料の講座を探してみよう。企業がスポンサーとなり、プログラミングやデータサイエンスの長期講座を無料で提供しているケースがある。