奇習！少女を少年として育てる究極の男尊女卑社会

少女を少年として育てる…「極度の男尊女卑社会」で起こる歪んだ風習（此花 わか） | 現代ビジネス | 講談社（1/4）
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そんな彼女が初めてアニメーションのプロデューサーを務めた『ブレッドウィナー』が12月20日に公開される。

本作は2001年アメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン・カブールを舞台に、11歳の少女パヴァーナが、家族のために髪を切り、少年になってタリバンに捕らえられた父親を助け出そうとする物語で、
第42回アヌシー国際アニメーション映画祭をはじめ世界中の映画祭で数多くの観客賞を受賞した傑作だ。

デボラ・エリス著『生きのびるために』（さ・え・ら書房）を映画化した本作で映し出されるのは、アフガン少女が少年として生きる物語。
少女が少年の恰好をしてタリバン支配下を生き抜くという驚きのエピソードは、原作者が取材を重ねて知った事実にもとづいたものだという。

監督を務めたのは、自由な作品作りで知られるアイルランドのアニメーション・スタジオ「カートゥーン・サルーン」の共同設立者でもあるノラ・トゥーミー。
初めて単独で長編作品を監督した彼女に、アフガニスタンの過酷な現実、そしてプロデューサーとしてのアンジェリーナ・ジョリーについて聞いた。

トゥーミー監督：公然の秘密、とでも言いましょうか。
「バチャ・ポシュ」は少女を男尊女卑の社会から守るという意味もあるんです。
それに、こういった風習は中東やアジアに限らず、アイルランドを含むヨーロッパにも昔はありました。
つまり、極端な男尊女卑の社会では性差を乗り越えようとする現象が起こるのだと思います。

――劇中、パヴァーナの父親の教え子だったイドリースという男の子がタリバン派となり父親を密告したことで、父親はタリバンに捕らえられてしまいます。
しかし、イドリースが100%の悪者としては描かれておらず、彼もある意味、政治の被害者として描かれているのが印象的でした。

トゥーミー監督：アフガンは長年多民族による支配が続き、独立はしていましたが、1970年代後半から1980年代後半まではソ連の軍事介入による政権が成立していました。
ソ連軍は多くの村を破壊し、1989年にソ連軍が撤退した後は内戦が続いたので、1994年ごろから台頭したタリバンを当初、アフガニスタン人は喜んで迎えていたんです。
だから、タリバンも男性も一方的な悪者としては描きたくなかった。

あるドキュメンタリー番組で、タリバンの男性が話しているときに幼い息子が彼の背中をよじ登っている様子を見て、私の息子も小さいとき同じように私の背中によじ登っていたことを思い出し、ハッとしたことがあったんです。
政治的に対極の立場にあり、ヨーロッパからは悪だと信じられているタリバンの男性だって、ひとりの人間であり、ひとりの父親でもあるんだ、と。
その瞬間に人間を単純に描いてはいけないと思いました。
なので、イドリースに関しては、「私が彼の母親だったら……」という気持ちで人物像を作り上げたんです。

それに、中東における紛争は、そもそもヨーロッパ人がヨーロッパの利益のために勝手に引いた国境が原因です。
アフガンが直面する過酷な現状は、本当にイスラム教やタリバンが原因なのでしょうか。
そんな単純な問題ではないと私は思います。