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https://mainichi.jp/articles/20201229/ddl/k20/010/149000c

阿部知事、この１年振り返り　コロナ、複雑な方程式　条例化、県民にお願いする根拠　／長野

阿部守一知事がこのほど毎日新聞のインタビューに応じた。昨年の台風１９号災害からの復興途上に、新型コロナウイルス感染症という「災害」が直撃したこの１年を振り返ってもらった。【聞き手・坂根真理】

　――どんな１年でしたか。

　◆難しい１年でしたね。昨年の東日本台風（台風１９号）からの復旧復興はまだで、仮設住宅で暮らす方もたくさんいます。今年に入ってから新型コロナへの対応が始まりましたが、皆さんのご協力の中で、何とかこの１年対応できたかなと思っています。

　当初から「救える命が救えなくならないようにしないと」と思ってきました。その意味では、医療関係者のご尽力で医療や検査体制は春先よりも強化されましたし、陽性者の数も、少し高いところではありますが、医療のキャパを上回ることにならず本日（２２日取材）に至っており、県民の皆さんの行動や事業者の皆さんの取り組みのおかげだと感謝しています。

　――状況が変化する中で新型コロナへの対応は大変そうでした。

　◆陽性者の数が増えると血圧が上がりました。これはしょうがない（笑い）。普通の政策は一度方針を決めればそれに従って進めればいいのですが、新型コロナ対策だけは常に状況が変わります。いろんな変数があるんです。県内の陽性者という変数、県外の陽性者の変数。県内経済の雇用がどうなるかというのもあるし、当初は医療検査体制が脆弱（ぜいじゃく）で医療側の変数もあり、（経済活動と両立させるのは）すごく難しく、複雑な連立方程式（を解いているよう）でしたね。

　――「新型コロナウイルス感染症等対策条例」が施行されました。条例を作ろうと判断した背景にどんな思いがありましたか。

　◆例えば「営業時間を短縮してください」というのは、非常に重い決断になるわけです。そうした影響が大きい権限を行使する上で、法令上の位置付けと適正な手続きの二つが重要だと思っています。県民の皆さんにお願いをする根拠となる法律が必要です。法治国家ですから。「新型インフルエンザ等対策特別措置法」だけでは十分に対処できないことが（条例作りの）きっかけでした。

　（新型コロナに感染して中傷を受けた人からの手紙が県に届いたことなどを受け）中傷についても条例に盛り込みました。あってはならないことですし、本当に多くの皆さんが悩んで傷つけられているわけです。我々が呼び掛ける必要もあるが、条例化されたことで重要な意味を持ったと思います。

　――２０２１年の抱負は。

　◆未来を創る一年にしたい。新型コロナ対策もやっていくが、（県内のデジタル化を進める）デジタルトランスフォーメーション（ＤＸ）戦略の推進や、ゼロカーボン（脱炭素）社会の実現にも取り組んでいきたい。これらは新型コロナが追い風になっていると思っています。「３密」回避の動きの中で地方が注目され、テレワークやリモートワークが当たり前になりつつあり、社会全体がゼロカーボンに動き始めています。県が取り組もうとしている政策にプラスの動きが生まれ、少しずつ形になってきています。来年はこうした動きを具体化していきたいですね。