広島の原爆当日の朝に生まれ、数時間後に被爆死した赤ちゃん　「その子には、名前がないんです」

【ヒロシマの空白】「あまりにふびん」　生まれた当日に焼かれたわが子　名なき命

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■名前なき子の命を墓石に刻む　「原爆死　享年　当才」
　「その子には、名前がないんです」

　広島市南区の前田八重子さん（69）は、父沖野実さん（1991年に80歳で死去）から亡きわが子たちへの思いを幾度となく聞かされたという。

　旧姓「久保田」だった実さんは、ハワイの移民家庭に生まれた日系2世。後に祖父母が住む広島市に戻り、結婚して家庭を築いた。
45年8月6日の早朝、妻ツヤ子さん＝当時（25）＝が西観音町（現西区）の自宅で次女を出産した。実さんが自ら産湯やおむつを用意して立ち会った。

　実さんが玄関を出て助産師を見送った直後、広島上空で原爆がさく裂した。

　ツヤ子さんと次女、長女寿美恵さん＝同（2）＝は自宅の下敷きになった。実さんは手記に、こう書き残している。
「手を血まみれにしてやりましたが駄目でした」。火が迫り、長男を連れてその場を離れるしかなかったという。
寿美恵さんは「おとうちゃん熱いよー　火がちたよー　ててが焼けるよー…最後の絶叫を残して声はしなくなった」。

　後に実さんは再婚し、長男と戦後生まれの前田さんたち娘2人を育て上げた。
数時間だけこの世を生きた次女を墓石に「昭和二十年八月六日原爆死　享年　当才」と刻み、毎月のように一緒に墓に参った。

　「あまりにふびんで…。生きた証しを残せないかと」。父が生涯背負った悲しみを胸に、前田さんは昨年、
原爆犠牲者の名前の登録・公開の申請を受け付けている国立広島原爆死没者追悼平和祈念館（中区）を訪ねた。
前田さんの思いを酌み取り、名前のない次女を登録してくれた。名前の欄は空白のまま、当時の実さんの姓である「久保田」さんとして。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/2fd298e35dd30023c1212b808bfe9b8e7e045a6d