能登豪雨で亡くなった中学3年生の喜三翼音さん。家ごと流されたので遺品はなかったが、小学校卒業記念に作ったDVDが瓦礫から見つかる

輪島市朝市通りで蒔絵師として漆器店を営んでいた誠志さん。祖母の悦子さんと二人三脚で歩んできた。休みの日にはよく孫の翼音さんが手伝いに来てくれていたという。包装やレジ打ち、接客まで「じいちゃん、ばあちゃんのために」といって駆けつけてくれた。
その店も元日の能登半島地震による大規模火災で焼失してしまった。店を失った後も翼音さんは祖父の作品作りの手伝いを欠かすことはなかったという。
しかし今度は大切な翼音さんまでもが帰らぬ人となってしまった。

そんな中、翼音さんの遺族のもとにある連絡が届く。
連絡をくれたのは滋賀県のNPO法人の代表を務める川村美津子さん。豪雨の発生からおよそ2週間後、ボランティアで輪島市久手川町を訪れていたときにあるものを見つけたという。

川村美津子さん「DVDががれきの上に置いてあって…」

それは、砂だらけになったDVD。損傷がひどく再生はできなかったが、誰かの思い出の品ではないかと思い、川村さんは復元するため一旦滋賀へ持ち帰った。ボランティアの力を借り映像を復元すると、そこに映っていたのは翼音さんの姿だった。

川村美津子さん「まさか翼音さんの物だとは全く思わず…」

DVDは翼音さんが小学生の時に撮影されたものだった。

川村美津子さん「ご家族が見られたら、もうほらもう辛いばっかりかもしれないけど、翼音さんが生きてた証が見つかったのなら、それはそれで私が反対の立場だったとしても嬉しいかなっていうふうに思いたい」

届けたかったのは翼音さんが生きていた証。ことし3月、川村さんはDVDを届けることを決め遺族のもとを訪れた。
「いろいろ探したんですけど全然見つからなくて」DVDを受け取った祖母の悦子さんの目には涙が浮かんでいた。
「一番彼女が帰りたかった、渡して欲しかった人に渡してくるわねって言って（翼音さんに）お約束をさせてもらった」と川村さん。「約束が果たせてほっとしています」
小学校の卒業を記念して作られたDVD。再生するとそこには同級生と一緒にトランペットを吹く翼音さんが映っていた。

祖母・悦子さん「本当に何もなくなったので本当にありがたい。本当に良かったなと思います」

大切な家族も、大切な思い出もすべてをのみ込み奪い去ったあの日の雨。1枚のDVDが翼音さんと遺された家族とを再び引き合わせた。

読めるわけねえわ