静岡大学「縄文人はサトイモが主食だったのではないか」

稲作する前の縄文人「サトイモが主食だった」説　静岡大、野生のルーツ研究
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縄文前中期は人口が大きく増えた。稲作が広がる前、狩猟と採集だけでは足りない重要な栄養源がサトイモだったのではないかと本橋教授はにらむ。

本橋教授は長野県・沓掛温泉（青木村）、山梨県・龍源寺（甲府市）、島根県・芋の谷（松江市）などの野生サトイモと、国内外のさまざまな品種のゲノムを比較。すると、野生サトイモは各地に点在しているが同じグループとなり、日本の他の栽培品種よりも、原産地とされるインドの芋に近かった。種類はエグイモだった。

エグイモは食べられる。許可を得て沓掛温泉の芋を大学の農場に移すと、順調に生育。生芋はえぐ味成分のシュウ酸が若干多いが、煮ると栽培品種と同等になり、食味も「ずば抜けておいしくはないが食べられる」という。長野県は縄文遺跡が多く土偶も出土している。本橋教授は「心に余裕があり、食べ物の心配を年中しなくてよい環境だったということ。その一つの要因がサトイモではないか」と説明する。

縄文中期までは今より温暖で、東北地方まで広くサトイモを育てられたと考えられる。その後は冷涼になり、日本のサトイモの多くは種を作らないため芋が凍ってほぼ全滅。一部の温泉地や湧水近くでだけ、今も野生で残っているとする。

ただ、殻が残りやすい貝や木の実と違い、サトイモの痕跡は国内の遺跡や土器から見つかっていない。本橋教授は当時の料理とみられる炭化物を手がかりに、サトイモ由来のタンパク質が残っていないか調べている。