インド人「女なんか必要ねぇんだよ！」　性の選別で“生まれてこなかった女児”が680万人に

前出の「ガーディアン」は、インドに根強く残る児童婚の習慣も女児の中絶がなくならない一因になっていると指摘する。児童婚を撲滅するための活動をしているNGO「ガールズ・ノット・ブライド」によれば、インドでは27％の女性が18歳未満で結婚している。
若くして結婚した少女には中絶のリスクや女性の産む権利に関する知識がなく、夫側の家族が中絶を強要した場合、それに逆らうことは難しい。

こうした状況を受けて、インドでは1994年に羊水検査と超音波診断による性別判定を禁止する法律が制定された。だが、性別判定をおこなう闇業者などが存在するため、法律の実際の効力はほとんどないという。

インド北部ラジャスタン州のシーカル市で女性支援の活動をしているアヌラーダー・サクセナ氏は、「ガーディアン」の取材に対し、約680万人の女児が消失するという推計には驚かなかったと答えている。
「長年続いた伝統や慣習を変えていくには時間がかかります。私たちは女児に対する認識を『嫁に行くときに多額の持参金が必要な厄介者』から、『男児と平等に価値のある人間』に変えるために活動しています。時間はかかりますが……」

インドの家庭では、女児より男児が優遇される場合が多い。そうした差別は教育や医療の面だけでなく、日々の食事の内容など些細なことにまで及んでいる。
そこでシーカル市ではサクセナが中心になり、家の表札に女児の名前を刻んだネームプレートを飾るなど、女児も男児と同じくらい大切な存在なのだということを地元住人に伝える活動がおこなわれている。

キングアブドゥラ大の報告書は、性の選別の問題を改善するには、いまある性差別に目を向け、ジェンダー平等を推進する政策が必要だと訴えている。