狐耳ロリババア「くっ…呪ってやるぞ…この身が滅びようとも七度生まれ変わり貴様の血筋を滅するッッ」

狐耳ロリババア「社会の底辺で暮らすお主のような男が仇敵の末裔とはな、復讐がアホらしくなったわ」

狐耳ロリババア「その無様な姿を側で毎日観察してくれようぞ♪」

みたいにされたい

とか言われちゃう

みたいにしてくれる

渡してやるつもりのところに、芯から困り果てている様子の狐に、流石に少年は酷いことをした気になって、全て渡してやろうかとも思った。

しかし自分自身も昼間からの働きで腹も酷く空いているし、あと一度だけ困らせてやろうと思った。

それが無理だと降参したら、酒も付けて渡してやろう。

少し考えたが、一番の無理難題を思いついた。

「よし解った。それじゃあ、俺は独り身で夜が寂しい。若い娘を所望だ」

狐は何も言わずに俯くと、焚き火の光の輪から去って行ってしまった。

「しゃんしゃん。

しゃんしゃん」

銀の鈴の震える音と共に、ぱらぱらと小雨が一瞬行き過ぎる。

思わず天麩羅を庇おうとした少年は、焚き火の側に白い姿が佇んでいることに気が付いた。

白の筒袖に白袴、背中までの鴉の濡れ羽色の黒髪に抜けるような色白の、見たことも無いような美しい娘だった。

娘は元より細い目を線にして微笑む。

「お待たせいたしました。先程の狐です。まだ子を産んでいないので、若いつもりなのですが」

娘は細い指で、自分の袴の帯をするすると解き始めた。

若者は必死に声を励ました。

「ま、また化かすつもりだろう！」

袴が落ちて、娘はもう一度微笑んだ。

「あなたさまは、ちゃんと眉を濡らしていらっしゃいます」

指が若者の眉を撫でる。

「朝目が醒めたら、肥溜めにでも浸かっている訳か？」

震える声に、娘は首を傾げる。

「あなたさまは、鉈も、煙草も、まだお持ちでいらっしゃいます」

筒袖が細い肩から滑り落ち、桜を貼り付けた真っ白な乳房が震えた。

「俺は取り殺されてしまうのか？」

泣きそうになった少年に、金色に目を光らせた娘が艶やかに苦笑する。

「一生一度のご馳走をくださる方に、そんな無体はいたしません。ただ…」

少年の着物をほどいて行く手は一対ではなかった。

「あのように焦らされたのですから、少しだけ嬲られるのはお覚悟ください」

少年の周りには同じように筒袖、白袴姿の娘達が微笑みながら待っている。

一番年かさの娘が、まだ温かい鼠の天麩羅の木皿を捧げ持ち、深々と一礼していた

弟子の少年が魂を抜かれたように虚ろな顔をしているのを見て、さては山の神様に魅入られたかと不安になった。

それで弟子を井戸端に呼び寄せ、冷水を何倍も頭からかけると、剥いだ着物の下に幾つもの歯形や爪痕が赤く青く残っているのに気付き、硬い拳骨を降らせたのだった。

深くは追求しなかったが、事情はそれで何となく察したようだった。

それからも少年は、炭焼きと猟と木樵の毎日を過ごしていたが、師の目を盗んでは鼠の天麩羅を事ある毎に作っていたというお話。

どっとはらい。