金貸し(♀)「なに、難しく考える必要はないよ。ここにサインすれば、それでいいんだからね。」

金貸し「だったらやらない手はないだろう？さあ、はやくサインを…。」

金貸し「…………キミ、もしかしてまだ迷ってるの？」

金貸し「はぁぁぁぁ……。……あのね、何度も説明したことだけど、もうキミに残された道はこれしかないの。分かる？」

金貸し「キミが担保になるだけでキミの大切な家族はまた元の生活を送れるようになるの。お父さんの会社、建て直したいんでしょ？」

金貸し「それとも、キミは自分のお父さんが信じられないのかな？またどうせ失敗する、そうしたら自分は売られるって、そう考えてるの？冷たい息子だねぇ……。」

金貸し「今まで大事に育ててくれたお父さんなんでしょ？なら信じてあげなきゃ！キミが信じなくてどうするの？」

金貸し「大丈夫大丈夫、きっと会社はすぐに軌道に乗るさ。今までいくつも会社を見てきた私が言うんだ、保証するよ。」

金貸し「事業が上手く行けば、お父さんもお金を返せて、キミもまた家族と幸せな暮らしができる。だからさ、そんなに深く考えないで……ね、サイン……してくれるね？」

金貸し「……うん、それじゃあはい、こことここ……あとここに印鑑ね。」

金貸し「……………。」

金貸し「…………うん、いいね。不備もないし、それじゃあこの書類に基づいて、少しのあいだだけ、キミのこと担保にするから。大丈夫大丈夫、ほんの少しのあいだだけだから。」

金貸し「っと……そうだったね。キミはこれが目当てだったんだもんね。はい、どうぞ5000万。流石にこのまま持って帰らせるわけにはいかないからね、お家まで送っていくよ。」

金貸し「帰ったらお父さんによろしくね。ま、仲良くやっていきましょうってさ。」

金貸し「まあまあ、立ち話もなんだし座ってよ。……お茶お出しして。」

金貸し「…………で、なんか用？金を返しに来たって感じじゃないよねぇ。困るなぁ……もうとっくに返済期限過ぎてんだけどな。」

金貸し「……ちょっとちょっとどうしたのォ。ふふ、いきなりどうしたの○○くーん。ほらほら頭上げてぇ。」

金貸し「ねぇ、どうしたの？ん？」

金貸し「…………あァ？追加融資だァ？」

金貸し「ふ、ふふ、ふふ。キミ、面白いこというねーぇ。なにぃ？ろくすっぽ金も返せねぇクソ不良債務者に追加で金貸せってぇ？はは、なに？頭腐ってんの？」

金貸し「こっちも遊びでやってんじゃねぇんだわ。分かる？お金を借りたら返すのがルール。そんなのガキでも分かってることでしょ？」

金貸し「そんな常識も守れねぇクソ野郎に貸す金なんてあるわけねぇだろ。馬鹿も休み休み言えよ、クソガキ？」

金貸し「なに？返せない？なんで？前にお前に持たせてやった5000万はどこへ消えたんだ？なあ、まさかケツ拭く紙にでもしちまったか？」

金貸し「…………倒産？…………あー、知ってる知ってる。うちも商売だからねぇ、金貸した会社の動向は逐一探ってるよ？」

金貸し「しっかしテメェの親父もバカだよなあ。ただでさえ利益の少ねぇ飲食に、ズブの素人が手ぇ出して成功するわけねーだろうが。まったく……ふふ、バカな親父を持つと息子も苦労するよなぁ？」

金貸し「で、まあそれとこれとは話が別だわなぁ？会社潰れようがなんだろうが、借りたもんは返してくんなくちゃなぁ？そうだろ？」

金貸し「……あーあ……これはもう仕方ないかなぁ。あのさぁ、忘れたわけじゃねぇと思うけど…………○○くぅん、キミ、担保なんだからね？」

金貸し「……あのさぁ、テメェが自分でサインしたんだろうが。印鑑まで押して。それをまさか無碍にするってわけじゃないよねぇ？」

金貸し「そーんなことされちゃったらウチだって……いつまでも甘い顔してらんねーぞ…？」

金貸し「まあいくらバカなキミでももう薄々気づいてると思うけど、ウチ闇金なんだわ。世間一般でいうこわーい人種……ね？」

金貸し「そんな人たち怒らせちゃったらどうなるか……なーんとなく想像つくでしょ？楽に4ねるなんて思ってんじゃねぇぞ。」

金貸し「テメェらクソ家族が最後の一円まで足揃えて返すまで、どこまででも追い詰めてやるからなァ。高飛びしようがなんだろうが、もう二度とご近所さんと目合わせらんねぇ暮らしさせてやるよ。」

金貸し「…………でも……。大人しくキミがウチに来てくれたら、もう金輪際キミのご家族には関わらないよォ？だってキミ、担保だから。」

金貸し「きっとご家族も助かるんじゃないかなぁ？だって、キミのぶんの生活費が丸々なくなるわけだから。」

金貸し「これからきっと壮絶な極貧生活が待ってるんだろうけど……そんななかで育ち盛りの男の子がひとり消え失せるだけで、ちょっとは違うんじゃないかなぁ？」

金貸し「ねえ……どうする？選択はふたつにひとつ。……今ここから帰って、明日から借金や取り立てで眠れない日々を過ごすか……大人しくウチのものになって、ご家族の生活を助けるか……。」

金貸し「な……選べよ。今すぐ選べ。…………選べっつってんだろうがァ！！！」

金貸し「まあ当然だよねぇ。よかったよかった、いくらキミがバカでも常識の最後のひと欠片が残ってて安心したよぉ。」

金貸し「そういうわけだから…………お前、今から“モノ”な。もう二度と人間扱いなんかしねぇぞ。分かったな。」

金貸し「あーそうそう、テメェのクソ家族にも事情説明してやれよ。もう二度と戻れませんってなぁ。ほら、電話貸してやるから。」

金貸し「…………とっととかけろや能無しがあッ！！なになにぃ？いくらモノになったからって、ケータイの使い方まで忘れなくたっていいんだぞぉ？ほれ。」

金貸し「……………。」

金貸し「…………プッ、クククッ……アッハハハ…………！！」

金貸し「おい、代われ。……あーもしもしィ。どーもご無沙汰してますぅ。大体の事情はもうお分かりだと思いますけどォ、お宅の息子さんもうそちらには戻らないんで。」

金貸し「はい、まーせいぜい借金肩代わりしてくれた“元・息子”さんに感謝しながらとっととくたばるなりなんなりしてくださぁーい。」

金貸し「んー？後ろで泣いてるのは妹さん？あーすいませんが代わってもらえますぅ？……いいから代われよクソ親父ィッ！！…………あーもしもし、妹ちゃんでちゅかー？」

金貸し「ごめんねぇ、妹ちゃんのだーちゅきなお兄ちゃんねぇ、もうキミのお兄ちゃんじゃなくなっちゃったのぉ。今日からキミはひとりっ子ってことで頑張って強く生きてくんだよ～。分かったなぁメスガキ。アーッハッハッハッハッ！！ウヒッ！ヒーッヒヒヒ！！」

金貸し「…………はぁー楽しかった…。やっぱよわーい立場の人間踏みにじんのは最高だよな～ァ。ねー、○○くん？」

金貸し「……なにその目？自分の立場分かってんの？…………あーなんか腹立ってきたわ……。」

金貸し「おーい、お前らもう今日は帰っていいぞ～。明日からまたよろしくさん、はいじゃーお疲れぇ～。」

金貸し「…………さてぇ…？ふたりっきりになっちゃったねぇ、○○くぅん？これから何が始まると思う？」

金貸し「プッ……フクククッ……………もう死ぬまで二度と忘れらんねぇこと、してやるよ……。…………とりあえず着てるもん、全部脱げ……。」